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桜色の日々

カコバナ
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【弱い女】

まだ5歳くらいの男の子を連れた若い女が
私の部屋にいて、テレビを見ていた。

「やっぱりTVはおもしろいわねー。ねえ、見て見て。」
と女は誰に言うでもなく一人ではしゃいでいた。

「誰なんだ・・、この女、そして何故私の部屋にいる、
私の部屋にTVはなかったのに、何故あるんだ。」
私は思いながら、
「私はテレビは嫌い!」
と一言だけ口にした。

女は困ったような顔をこちらに向けたが、
私より数段若く、まだあどけなさが残る顔立ちだった。

私には恋人がおり、どうやら、その恋人が連れてきた女らしかった。

何故、私のところへ来たのか?
その疑問は解けないまま、私たちは一緒にいることになった。

子供はとてもかわいらしく、マルコメみそのCMぼうやのような頭をしており、賢そうだった。
私はひとめでその子が気に入ったが、
恋敵の子供ということで、素直にかわいがってやれずもどかしい思いをしていた。

そして恋人が現れた。
何もしやべろうとせず、ただにこにこと私たちを見ている。
彼女も、私と同じように私に負けないくらいその恋人が好きだったのだろう。
こういう状況に文句を言うこともなく、彼に気を使っていた。

私はよく考えた、この女は身寄りがないのだろう、行くところがないのかもしれない、
彼は困って私のところへ連れてきた、
私ならなんとかしてくれると思ったのだろう、
けれど、安っぽい言葉で私をだましたりしても、
私はすぐに見抜くだろうし、
ここは黙って、流れにまかせるしかないと判断したのだろうか。

いつもの男のずるい考え方だった。
そして、それを許してしまう、私の「惚れた弱み」だった。

女は彼に100%頼ってるというふうでもなかった。
自分の立場をよくわきまえ、私に気を使い、
お姉さんが彼の恋人です。私は・・・その次です。
そう無言で言っているような態度だった。

それをされている限り、ほんの少し私には安堵があった、
けれど、それで嫉妬の炎が収まるわけでもなく、
ゆらゆらと種火のようにくすぶる炎を身の内に感じていた。

そして私が何か言おうとすると、決まって彼は、私を抱きすくめ、
床に押し倒してきた。
「何するの・・」
無言。彼は何もしゃべらない。

ああ、こういう男なのね・・・、
わかってはいたけれど、悲しい。

「何故、あなたは一人の人だけを愛せないの?」
そう私は聞いた。

わかっていた、わかってはいたのだ。
彼が本当に愛しているのは私ひとり。
けれど、弱った人、困った人をみれば拾ってきてしまうのだ。
彼女は子連れで、息子とふたり頑張って生活していたのだろう、
そこに彼と知り合ってしまい、
恋する女は、途端に心のバランスを失ってしまうのだ。

そんなことは自分が経験済み、よくわかっている。
心のバランスを失ったあとは、
ただ男の言うとおりに、「ついていきたい!」と切なく想うものなのだ。

子供とふたりで力強く生きていこう、といつかの日に決心したばかりなのに、
彼と出会ってしまったために、
弱いか弱い女になり、私の気持ちを窺いながら
なんてかわいそうな女になりはてたか。

私は強い同情を、そして同じ想いをしてきたものとして、
私も又、女を見捨てることができなくなっていた。



【完全フィクションです】

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