忍者ブログ

桜色の日々

カコバナ
[77] [76] [75] [74] [73] [72] [71] [70] [69] [68]

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

悪性リンパ腫で死んだ元恋人

その人は、やもめだった。
若くして結婚して子供ができ、私と知り合ったのは32歳のとき。
すでに子供が11歳くらいだったと思う。
会社に子供と一緒に住み込みをしていた。

彼はお酒好きで、飲み方で一緒になると
しきりに私を気にして、なんとなく近づいた。
私も彼が好ましく思え、すごく人間づきあいに不器用だけど
とても根は優しい人だと思っていた。

ある日、飲み方の帰り、
その人を会社まで送って行った。
けっこう酔っ払っていたので。
そしたら帰り際、私をぎゅっと抱きしめてきたので
私から彼のおでこにキスをした。

私は24歳。
もう結婚を真剣に考えるような人でないと恋愛してはいけないと思っていた。
でも、バツイチで子供がいても結婚は考えられると、それから
私たちは一緒にいることが増えた。

けれど、社内では絶対秘密だった。
私は別に秘密でなくても良かったんだけれど
何故か彼が異常に気を使っていた。

あとで、わかったけれど、以前少し付き合っていた人が
社内にいたのだ。
私は若かったので、何か浮気でもないのに隠すことによって後ろめたさがあるのがすごく嫌だった。

日が経つにつれ
なんだか急に
「これではいけない」と思った。
そして決定的になったのが彼の言葉
「一生、結婚しない。」

秘密の付き合い、そして未来のない付き合いは私にはこれ以上無理だったのか。
その頃、親と同居していたこともあり、
夜にこそこそ出かけていくのにも限度があった。
いつものように彼から電話がきたとき、
理由をつけて断った。

それから何度か断った。

自然消滅のような形で私たちの関係は終わったが
それでもお互いに友情以上の想いを抱いていることはわかっていた。
ずっと好きだった。

社内で言葉を交わすことも避けていたが
眼はお互いを追っていた。
彼はきっと私の気持ちを察してくれていたと思う。

彼の元奥さんは子供が一歳にならないうちに子供を置いて家を出た。
そのことが彼は許せなく、一生許すことができない、と
そして、女性恐怖症と言うか、
女性を信じられなくなっていた。
たぶん、私は彼が心を許した数少ない女性の一人だったと思う。

結婚は絶対しない、と
彼の決意を聞いた時、すごく悲しかった。
こんなに頑なになってしまった、この人の人生ってなんだろう。
でも、私はまだ若い。
これから結婚しなければならない、
別れるしかない、とそんな気持ちだった。

それから数年して、子供が独り立ちをし、彼はアパートに居を移し、
一人暮らしを始めた。
釣りとお酒が趣味で、楽しく人生を送っていたと思う。
誰かと付き合ってると噂も聞いたりした。
もう、私のことは忘れたかな、とずっと思っていた。

そんなある日、
彼が入院した。
毎日、夜中、背中に激痛が走り、我慢しきれず
病院に行ったという。
結果は胃潰瘍だと知らされた。

入院したのでお見舞いに行くと、
ロビーでたばこを吸っている。
びっくりして
「たばこ吸っていいの?」と聞くと
医者から吸っていいと言われたと
「治療はなんもない、薬もない。」
と言った。

「胃潰瘍なのに・・?」
と、何か他の病気の影がちらついた。

それから、月日が流れ、
彼の具合もいいときもあれば、悪い時もあるといった感じだったが
やはり以前のような元気は取り戻せない。

社会保険の傷病手当金を申請するために
世話をしていた妹さんに頼んで診断書をとってもらった。
そしてそれには
「リンパ腫」と書いてあった・・。
愕然とした。
いったいどうなるんだろう・・。

けれど、病名を知らされてなかった彼は
普通に仕事をし、
それから2年間生きた。

ある日、病院に通っていた彼が
「腹が膨れてきた、なんだろう・・。」と言ってきた。

つたない医学の知識の中で
「腹水」という言葉が浮かんだ。
もう、長くないのでは・・と思った。

それから入院し、ほどなく亡くなった。

あとで、妹さんに、
最初に病院に行った時はもう手遅れで
最後まで病名を知らせなかったこと、
遠くに就職していた息子にも知らせなかったこと(心配するので)
などを聞いた。
亡くなる数日前にお見舞いに行ったが
すごくおだやかな顔をしていた。

私は
「私にだけは最後に何か言うことはなかったの!」と
ただただ号泣した。

付き合ってる人も実際いなかった。
ただの噂だった。
私と別れてからは、恋人がいなかったのか・・。
「結婚」にこだわならなければ今も愛は続いていたのか、
今となっては何もわからないけれど、

愛されていた、という確かな思いだけは
いつまでも私の宝物だ。



 
 
 
  
  
  
  
PR

コメント


コメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字


水色 深緑
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新TB
プロフィール
HN:
れい
性別:
女性
職業:
会社員
自己紹介:
大波小波、もまれていつしか岸に流れ着いたか!?
それともまだ漂流中?
バーコード
ブログ内検索
カウンター
最新CM

忍者ブログ [PR]